嘘も本当も本音で話したい

好き嫌いを喋るなら、建前なんてすっ飛ばして本音で話したいですよね。

*

最強のふたりを観た感想:スタイリッシュで生命力に溢れた傑作

      2016/01/06

最強のふたりを観ました。

もう最高にスタイリッシュな映像と最高にイキイキとした生命感が満ち溢れる映画で総じていえばサイコーでした。

最強のふたりの概要

2011年のフランス映画で、フランスの歴代観客動員数第3位になった大ヒット作です。日本でも、公開されたフランス映画の中で歴代1位の興行収入を記録した大ヒット作です。

フランス映画といえばアメリの印象ですが、日本ではアメリよりもヒットしたフランス映画ということです。

監督・脚本はエリック・トレダノとオリヴィエ・ナカシュのコンビ。

主な出演者はオマール・シー、フランソワ・クリュゼ、アンヌ・ル・ニ、オドレイ・フルーロなど。

最強のふたり受賞歴

最強のふたりはフランス映画史上に残る大ヒット作ということで、受賞歴もかなりすごいことになっています。

東京国際映画祭でグランプリ、
セザール賞で主演男優賞、
リュミエール賞で最優秀男優賞、
グローブ・ドゥ・クリスタル賞で最優秀映画賞と最優秀男優賞、
フランス映画祭で観客賞、
日本アカデミー賞で最優秀外国作品賞受賞、と受賞ラッシュ。

その他ノミネートも合わせると驚異的なノミネート数でした。

最強のふたりのあらすじ

パリに住む白人富豪のフィリップは頸髄損傷で首から下の感覚がなく身体を動かすことができません。

住み込みの介護人を雇うため面接をしていますが、皆フィリップを障害者としてしか見ません。

そんな中、黒人コミュニティー出身のドリスが面接にやってきます。

ドリスは介護経験もなく、ただ失業保険がほしくて形式的に面接に来ただけでした。

ただフィリップからすると障害者として自分を見ず、ひとりの人間として対等に扱うドリスに興味を覚えドリスを介護人として雇います。

もともと積極的な性格だったフィリップもケガをしてからはおとなしくそれでいて気難しくなっていたけれど、破天荒なドリスと対等な人間として接するうちにふたりの間には確かな友情が育まれていきます。

といった感じです。

冒頭のドライブシーンで心鷲掴み

私は最強のふたりを観て、冒頭のドライブシーンですでに心を鷲掴みにされました。

光の使い方がとてもスタイリッシュで、あとはドリスの横顔とドリスの眼が凄いです。横顔のドリスの眼が光を綺麗に反射していて表情に生命力に満ちあふれていて最高です。

追ってくる警察を上手くやりすごしearth wind & fireの代表曲septemberを車の中で流し、ふたりともノリノリで歌うシーンの多幸感はヤバいです。音楽と映像のマジックが効いていました。

フィリップの養子であるエリザとの絡みが最高

あとこの映画で個人的に好きなのが、フィリップの娘エリザとの絡みです。

エリザはもともと躾もほとんど受けていないというか家で働く使用人たちに敬意をまったく払うことなく接するような娘でした。

ドリスのことも「新しい父の使用人」と呼び、ドリスの名前を呼ぶことすらしませんでした。それに対しドリスが「俺には名前がある。」と言います。

エリザの人を見下す態度にガマンできなくなったドリスはフィリップにエリザを注意するよう進言します。フィリップはエリザに厳しく注意してエリザは落ち込みます。

さらに追い打ちをかけるように、エリザは付き合っていた彼氏に振られひどい事も言われ傷ついてしまいます。

傷つくエリザを見て、もともと対立していたドリスは根が優しいのでエリザを優しく元気つけます。

ただそこでエリザは「あなたから彼に話して、お金なら払うわ。」と言ってしまいます。

ドリスの名前を呼ばず、すぐお金で解決しようとするエリザに「いいかげんにしろ!金を払う?俺を誰だと思ってる!」とドリスは一喝して部屋を出ていこうとします。

部屋から出て行こうとするドリスに対し、ようやくエリザが「ドリスお願い。」とはじめてドリスの名前を呼びます。

するとドリスもひょっこりと顔をだし「いくら払う?」とおちゃらけながら承諾し、エリザの元彼に対し「エリザに謝れ。あと礼儀正しくしろ。」と注意します。

わがままで人を見下し、使用人の名前すら呼ばないエリザに名前を呼ばせるドリスは最高でした。

ドリスと他の介護人の対比がわかりやすくて良い

この映画ではドリスとドリス以外の介護人がわかりやすく対比して描かれています。

面接でドリス以外の介護人は「人を助けたい」とか「障碍者が好きです」とか「障碍者の自立と社会参加を助けたい」と志望動機を語ります。

フィリップを「要介護人」として扱う介護人が多い中、ドリスはフィリップに対しまったく容赦もなく敬語も使わずに接します。

さらに夜中にフィリップが発作を起こした時には
「大丈夫?音楽かける?」とはじめは冗談を言います。

たださすがに症状がヤバいと思ったドリスはすぐ濡れタオルでフィリップの頭を冷やし
「大丈夫落ち着いて、落ち着いて、ゆっくり呼吸を。聞こえる?心配ない。ゆっくり呼吸して、大丈夫だ。」といって落ち着けます。

この時のドリスの表情の優しさが素晴らしいです。

そんなドリスも色々あって介護人を辞める訳ですが、後任の介護人はフィリップが夜中に発作がおきたときに
「具合は?湿布でも?」と病人のようにフィリップを扱います。

食事のシーンでも後任の介護人は「食事を“手伝います”。」とあくまで要介護人としてフィリップに接します。

この辺りの対比の描き方は分かりやすいし個人的には良かったです。

フィリップと文通相手エレノアの恋の行方

フィリップはケガをした影響か恋には奥手で、半年も文通を続けるエレノアと電話で話すことすらはじめはできませんでした。

ただドリスが無理やり電話をかけてフィリップに電話をむりやり渡し会話をさせてから、フィリップとエレノアの恋は大きく進展します。

エレノアへの手紙にフィリップの写真を同封することになり、ドリスはフィリップが車いすに座っている写りの良い写真を送るよう進言します。

ただ実際は障害があることを知られるのが不安で、フィリップは別の写真をエレノアに送ります。

その後エレノアがパリに来るときにデートする事になるも、フィリップは車いすの写真を送っていなかったこともあり不安になります。

結局待ち合わせのお店で直接エレノアと会うことなくフィリップはお店を出てしまいます。

店を出るところで丁度エレノアとすれ違うようになっていたシーンもしっかり伏線として最後に回収されていて気持ちいいです。

またドリスが選んだ写真をフィリップが実際には送らなかったことをドリスが知ってしまうシーンも見ていてジーンときます。

ガサツだけど血の通ったドリスの介護方法

この映画はドリスのガサツな介護シーンがたくさん出てきます。

チョコを欲しがるフィリップに対し「嫌だ。これは健常者用。」と言ったり。
食事をする時にフィリップの秘書に見とれて口じゃなく目のあたりに食べ物を当てたり。
髭を剃る時に変な形に剃って遊んだり。
誤ってフィリップの脚にお湯をこぼして無反応のフィリップに驚き再度お湯をかけたり。
女性関係の話のついでに「アッチ関係はどうしてんの?」と聞いたり。

ほかにもかなり失礼に見える振る舞いはあり、見る人によってはこれらは不快に感じるかもしれません。

ただ個人的にはどれもドリスの人柄でアリになってしまうし、むしろドリスのこういった容赦のなさこそフィリップの求めていたことでもあるのかなと思いました。

ドリスの介護はただガサツなだけの介護ではなく、血の通った思いやりのある介護にもなっています。

フィリップが車で移動するさいに、車いすごと乗せられるワゴンにフィリップを乗るシーンでは
「イヤだね。馬みたいに荷台に乗せろと?」と断ります。

そして障害者が乗るには“実用的でない”マセラッティにフィリップを乗せます。

個人的にはもともとマセラッティを持っているような目立ちたがりのフィリップだからこそ、ここでふたりでマセラッティに乗ってノリノリになるシーンはキーポイントになったんじゃないかと思います。

最強のふたりは、夜中に発作を起こしたフィリップを落ち着かせるシーンといい、ドリスの少しガサツながらも血の通った介護の仕方がすごく良いです。

形式的でフィリップを要介護人としてしか見ない介護よりも、実はフィリップのことを思った行為のように見えました。

フィリップの誕生日パーティーで音楽を流し踊るシーン

フィリップの誕生日には毎年サプライズ誕生日パーティーが行われています。

毎年だからサプライズでも何でもない訳ですが、フィリップは驚いたふりをしています。

開催する側も動けないフィリップが楽しめるように気を使い、オーケストラを呼んで演奏会を行うようなパーティーとなっています。

フィリップはそんな誕生日パーティーを「それぞれが努力する退屈な集まり」と称します。

そんな中ドリスは、オーケストラの演奏が終わった後に
「今度は俺のおすすめを聴いてくれ」
とアイポッドをステレオに繋ぎ、アースウインド&ファイアーの曲を大音量で流して踊ります。

フィリップは首から下が動かず踊れないんだからこのシーンも失礼になりそうですが、ドリスが「フィリップの誕生日だ、皆で踊ろう!」と誘い皆で踊ります。

皆が楽しそうに踊っている様子を見てフィリップも楽しそうでした。お互いに気を使う退屈な集まりよりもこういう扱いの方がフィリップも気が楽なのかもしれません。

この誕生日パーティーのシーンは最強のふたりの中でもかなりの見所ですし、多幸感にあふれた素晴らしいシーンです。

ドリスの人間的な成長とドリス役のオマール・シーの演技が素晴らしい

ドリスは介護人をはじめたばかりの頃に、フィリップ邸の前に車が留めてあって外に出られないシーンがあります。

そこでドリスは留めてある車を乱暴に叩き運転手を車から引っ張り出し、駐車禁止の表示をむりやり見せて車をどかせていました。

ただ色々あって介護人を辞めてフィリップ邸を出る際にまた別の車が家の前に留まっているときには、乱暴さやガサツさがなく洗練された注意の仕方をしていました。

このあたりのドリスの人間的な成長がかなり胸に来ます。

とにかくドリスのこの人間的な魅力が最強のふたりの見所です。単にストーリーを追う映画じゃないです。画面に映る生命力を全力で受け取る映画です。

ちなみにドリス役のオマール・シーはフランスでコメディアンをしている人で、演技がとても自然ではちきれんばかりの笑顔が眩しいです。

眼には生命力が宿っていてもうヤバいです。

最強のふたりのラストシーンがまた素晴らしい

最強のふたりのラストシーンはもうヤバいです。

ネタバレしないよう内容は伏せますが、かなり笑えるし深い余韻に包まれて観終わったあとに幸せな気持ちになります。

とくに最後のドリスのあの表情がヤバすぎます。包容力の化身です。

最強のふたりは介護、黒人と白人のコミュニティー格差、フィリップと前妻の死別、ドリスの複雑な家庭環境などがテーマとなった映画です。

ただしみったれた雰囲気作りの映画にはならないし、笑いと感動で全体を包み込む映画の作りになっています。

個人的に近年観た映画の中でトップ5には確実に入ってくる素晴らしい映画です。

 - オススメ映画