嘘も本当も本音で話したい

好き嫌いを喋るなら、建前なんてすっ飛ばして本音で話したいですよね。

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「本棚の10冊で自分を表現する」をやってみた。

      2015/09/17

最近ツイッターで「本棚の10冊で自分を表現する」というタグが流行っていて、自分もやってみたいと思って選んでみました。

好きな本でも影響を受けた本でもなく「自分を表現する」10冊

軽い気持ちで選び始めたものの、選んでいて悩んだのが「自分を表現する」という部分です。

好きな10冊を選ぶ、とか何度も読み返した本を選ぶ、とかそういうのとも違っていて、「自分を表現する」というところがすごく難しくて、何度も何度も選んでは変更し選んでは変更しを繰り返しました。

結果、2015年9月15日現在における「自分を表現する」10冊を一応選び決めました。

10satuhonn

一応一冊ずつネタバレにならないようストーリーについてはなるべく触れずにご紹介します。

さようならギャングたち - 高橋源一郎 (講談社文芸文庫)

高橋源一郎は単なるメガネをかけたおじさんではなく詩人です。詩的な表現と小説のフォーマットをちゃんぽんし、過剰なユーモアと愛と美しい言葉をまぶしたポップ文学の金字塔的作品。言葉に対する感覚がとんでもなく鋭く、一文字も置き換えることが許されない、こうとしか表現できないような表現になっていますが、パッと見は軽やかでポップ。凄まじい一冊です。

青い花 - ノヴァーリス (岩波文庫)

ドイツロマン派を代表する魔法のような未完成小説。ハインリヒの見る夢を描いた世界は幻想的で美しく、前後の文脈に囚われない結晶のような言葉がそこかしこに散りばめられ、もう見ている世界が違うんだなとしか思えないほどこの世界を美しく表現しています。メーテルリンクに「精神の究極の表現者」と名付けられただけあって、精神世界の描き方がとてつもなく上手く美しい。文章を脳内でヴィジュアル化しながらゆっくりと読みたい本。

世界の果ての庭 - 西崎憲 (創元SF文庫)

米国人学者と女性作家の物語、若返る病を患った母とその家族の物語、謎の辻斬り、巨大な駅を彷徨う脱走兵。関係があるようでないような物語の断片が折り重なりひとつの庭園を作り上げているようなチャレンジングな小説。実験的な試みを試した作品ながら、翻訳家らしい端正な日本語で描かれた作品。第14回ファンタジーノベル大賞受賞作。

生きてるだけで、愛 - 本谷有希子 (新潮文庫)

本谷有希子は人間を記号ではなく生々しい一人の人間として描き切れているので好きです。同棲する彼氏に対し「あたしがこんだけあんたに感情ぶつけてるのに楽されるとね、元取れないなって思っちゃうんだよね。あんたの選んでる言葉って結局あんたの気持ちじゃなくて、あたしを納得させるための言葉でしょ?」と言っちゃうとか。こういう表現がどんどん出てきます。わがままなところや感情的でメンドクサイところ、そういう女子特有の生々しい人間味が心にぶつかってきます。あと文章で笑わしにかかってきてるのはズルい。笑うに決まってんじゃん。

COTTON100% - AKIRA (幻冬舎文庫)

「人間には無限の可能性がある」なんて悟ったような有識者がほざくけど、おめえら限界まで行ったことあんのかよ、とツッコミを入れるAKIRAが、自らの身体ひとつで限界に挑戦する中で、生と死のぎりぎりから発せられた小説。もともとアンディー・ウォーホルから奨学金を貰いNYアカデミー・オブ・アートに入学したような芸術家肌なので、言葉の端々からカラフルなイメージが立ち上ります。日本人が書いた新時代のビート小説。頭で読むんじゃなくてハートで読む本。一種の体験です。

SPEED BOY - 舞城王太郎 (講談社文庫)

舞城王太郎の代表作と言えば、三島由紀夫賞を獲得した「「阿修羅ガール」や衝撃的なデビュー作「煙か土か食い物」だと思います。この本は舞城の代表作とは言えないですが大傑作です。小説でしか表現できない世界を言葉で表現しきっています。スピードの限界を打ち破り観念を突破する主人公の圧倒的な非現実感にここまで説得力を持たせる舞城王太郎の筆力はやっぱり凄い。舞城王太郎らしい疾走感とリズム感のある文章でつい一気読みしたくなるけれど、ちょっと立ち止まってじっくり読み解きたくなるような哲学的な名言が次々と目に飛び込んできます。

砂漠 - 伊坂幸太郎 (新潮社文庫)

大学で出会った5人の若者の物語。主な登場人物は北村、東堂、西嶋、南、東西南北の頭文字を持つ4人とそして鳥井。大学を舞台にしているけれど、学校関連のイベントやなんかはほとんどなく、麻雀や通り魔犯との遭遇、超能力対決などなど、様々な経験をする中で絆を深めあう物語。もちろん事件も起こるけれど、伊坂幸太郎お得意のミステリーではなく本質は青春群像劇。主人公は北村だけど、自分は北村よりも西嶋のど根性と愚直な努力に心打たれたし、そういう人は多いんじゃないかと思う。とにかく西嶋が良い。

次の町まで、きみはどんな歌をうたうの? - 柴崎友香 (河出文庫)

小説の技法には色々ありますが、その中に風景を描くことで登場人物の心情を表現するという技法があります。柴崎友香は、風景で登場人物の心の中を描くことにかけては今いちばん上手い作家なんじゃないかと思います。風景を描くという点で保坂和志の影響を受けているのは明確に分かるけれど、保坂和志が硬質なタッチで風景を描くのと対照的に、柴崎友香は風景をやわらかく温かく描きます。その温かさが読み手にきちんと伝わるし、読んでいてこんなにも心が温まる本もそうそうありません。何も起こらない小説、と言われることもあるけれど、何も起こらないなんてもってのほか。一文一文、ひとつの表現ごとに登場人物の心が丁寧に描かれています。

存在の耐えられない軽さ - ミラン・クンデラ (集英社文庫)

究極の恋愛小説、20世紀恋愛小説の最高傑作という体で売られているものの、その実態はゴリゴリの哲学小説。ミラン・クンデラの思想書と呼んでも良いくらい。もちろんテレザ、サビナ、トマーシュ、フランツといった登場人物が織りなす恋物語もきちんと描かれていてストーリーテリングも申し分ないです。でも存在の耐えられない軽さの本質は哲学的な思想にあります。あとこの本の本当の主人公は犬のカレーニンなのかもしれない。犬を飼っていた経験のある人はこれ読んで泣かない人はいないと思う。自分は飼っていた犬を思い出してどちゃくそに泣いた。

音楽から解き放たれるために-21世紀のサウンド・リサイクル - 原雅明 (フィルムアート社)

ヒップホップやエレクトロニカ、新世代ジャズや広義のエレクトロニックミュージック。その辺りの音を聴く人からすれば知らない人はいないんじゃないかと思う原雅明が書いた本。原雅明はもともとアーティストのキャラクターや書き手が作り上げる物語に違和感を覚えていて、「具体性に乏しく扇動的なだけのポップの文字の羅列に馬鹿らしさを覚える反面、そこに働いている感覚的な判断を素直に受け入れるだけの度量をライターとしては欠いているとも思い始めていた。」と言うだけあって、音楽を言葉で語ることを誰よりも意識しているしその言葉の情報量に眩暈がします。

あくまでも暫定的に選んだ10冊の本

本当に骨の折れる作業でした。

好きな本10冊ランキングとかならもっと単純に選べましたが何と言っても自分を表現する10冊ですから。ぜんぜん自分を表現できていない10冊になった気もしますが、2015年9月15日時点で選んだ10冊がこの10冊です。

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